1973 年 70 巻 10 号 p. 1025-1038
肝疾患111例を含む168症例の抗胃壁細胞抗体, 抗尿細管上皮細胞質抗体, 抗平滑筋抗体, 抗核抗体を蛍光抗体間接法により検出, その抗体価を測定し, 肝疾患に如何なる免疫異常が存するかを検討した. その結果, 亜急性肝炎, 原発性胆汁性肝硬変症, 肝細胞癌の3疾患に特異的に免疫異常を認めた. 特に各抗体の検索は, 原発生胆汗汁性肝硬変症と肝外閉塞性黄疸, 肝内胆汁うつ滞症との鑑別診断的に高い意義をもつ. これら各抗体の病因的意義が不明な今日, 以上の成績から, 直ちに肝疾患と自己免疫現象を結びつけることは出来ないが, 免疫的機序が肝障害の成り立ちに重要な意義をもつている可能性を示唆すると考える.