日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
ヒト十二指腸粘膜の細胞動態
仁木 弘典服部 隆則藤田 哲也郡 大裕川井 啓市
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1977 年 74 巻 9 号 p. 1146-1153

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抄録

3H-thymidineによるin vitroのオートラジオグラフィーと顕微蛍光測光法によるDNA定量により, ヒト十二指腸粘膜の細胞動態を調べた. 十二指腸粘膜のARGでは陰窩下部に標識細胞が層状に分布しており, 陰窩下部から絨毛に向う細胞群には形態学的移行像が観察された. これらの所見は, 十二指腸粘膜の絨毛の吸収上皮細胞や杯細胞は陰窩下部の未分化な細胞から作り出されることを示している. 一方, ブルソナー氏腺では約0.6%の割合で, 増殖中の細胞が特に局在なく, atrandomに分布していることがARGと顕微蛍光測光法により示された. これはブルンナー氏腺では常時, 約0.6%の細胞が細胞喪失をうめるべくin situで分裂し, 細胞を作り出していることを意味する. したがつて, ブルンナー氏腺細胞は陰窩から作り出されているとは考えられず, 十二指腸粘膜には陰窩から絨毛に向う細胞更新の流れとは別にブルソナー氏腺の局所でおこる細胞更新の様式があると考えられた.

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