日本消化器病学会雑誌
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意識下イヌにおける消化管内pHの長期連続記録法
伊藤 漸本多 隆一中村 卓次浅野 高正江浦 君夫林 耕三
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1978 年 75 巻 10 号 p. 1597-1605

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抄録

意識下のイヌを用い, 消化管内pHを長期間連続して記録することは消化器の生理, 特に各種臓器の調節機構を解析する上で極めて重要な手段である. こうした試みは1940年頃から主としてヒトで指示電極を嚥下させて行われて来たが, 電極の位置ぎめと固定の困難さが障害となつて来た. イヌにわれわれが開発したdrainage tube を植込み, この system に挿入可能な小型かつ鋭敏な反応性を有する安定性の高いpH電極の開発を行い, 満足すべきpH電極とそのsystem を完成させた.
即ち, ガラス膜の直径2.5mm, 支持管の直径3mm, 長さ30mmの複合電極であり, これに塩化ビニール製のキャップを装着し防水加工したものである. この電極を drainage system 内に挿入固定することにより胃や十二指腸における管内pHは極めて高い精度で安定して長期連続記録が可能となつた. 得られる記録は同時にpH7.0を中心に酸性側, アルカリ性側で夫々積分すれば, 一定時間内のpHの変化をmVと時間の積の形で定量化することが出来, 本法によつて消化管内pHの変化を定性的にも定量的にも解析することが出来る. このことは, 例えば消化管粘膜から放出される消化管ホルモンの放出機序の解明や, 潰瘍発生の原因をさぐる手段として, 今後大いに利用し得るものと考えられる.

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