Heidenhain pouch 犬を用い, 外胆汁瘻と内胆汁瘻としての胆のう空腸吻合 (Roux-Y) を行ない, 食餌刺激による胃酸分泌と血清ガストリン値の変動について検討した.
外胆汁瘻では胃酸分泌亢進はみられなかつたが, 胆のう空腸吻合では胃酸分泌亢進が認められ, 6頭中4頭では酸分泌量は対照の約2倍の有意の増加を示した. しかし, 血清ガストリン値は両術式のいずれでも増加を示さず, 一定の傾向は認められなかつた. また, 同一犬において胆のう空腸吻合 (Roux-Y) 後に, 同一空腸係蹄を用いて空腸係蹄十二指腸吻合を行なつたが, 胃酸分泌は対照に比して著明な亢進を示した. しかも, この際, 血清ガストリン値には一定の傾向は認められなかつた. なお, 胆のう空腸吻合において6頭中2頭に胃の多発性急性潰瘍が認められた. 以上の成績から, 胆汁の十二指腸への流出欠如による胃酸分泌亢進には脂肪の消化不全, 肝障害因子, さらに上部小腸での胃分泌抑制ホルモンの放出の減少のみならず, 上部空腸に直接胆汁が流出することにより放出される, ガストリンとは別の胃分泌刺激物質の存在の可能性を示唆するものと考えられた.
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