1978 年 75 巻 6 号 p. 869-881
各種腸疾患における胆汁酸組成の変化についての報告は少なく, とくに病変が回腸末端部や大腸にあるときには, その報告は稀である. 著者は caerulein 刺激によつて採取した胆嚢胆汁中の胆汁酸成分を, 薄層クロマトグラフィー法とガスクロマトグラフィー法を併用した測定法によつて分析し, (1) 広凡回腸疾患や盲係蹄症候群では, glycine: trurine 比は極めて高値を示すが, 病変が回腸末端部や大腸にあるときには健常者との間に差異がない, (2) 盲係蹄症候群では, deoxycholic acid の増加が著明であるが, 回腸末端部や大腸疾患では, 逆に極めて少ないことを明らかにした. これらの成績に基いて, 腸疾患における胆汁酸代謝異常の機序について考察を加えた.