1981 年 78 巻 12 号 p. 2308-2315
cysteamine hydrochlochloride(以下cystと略す)投与による十二指腸潰瘍発生機序について,実験的に粘膜防御機構の面から検討を行った.潰瘍の発生率はcyst投与後3時間群23%(n=13),12,24時間群は100%(n=10)であった.防御機構の指標として,十二指腸粘膜血流量(水素ガスクリアランス法),微細血管構築像,および走査電顕像を用いた.十二指腸粘膜血流は,cyst投与後30分で有意に低下を示した(p<0.05).微細血管構築像では,潰瘍発生部位に一致して血行上のweakpointが認められ,投与後30分で絨毛の変性,脱落が観察された.同様に走査電顕像においてもweak pointを示唆する所見が得られた.また抗潰瘍剤であるcetraxate, secretinで前処置した群においては,粘膜血流の低下がある程度抑えられ,潰瘍発生は抑制された.