1981 年 78 巻 4 号 p. 864-873
劇症肝炎39例について,経過中にBUNが35mg/dl以上かCreatinineが2.0mg/dl以上をきたした症例を腎不全合併例とし,腎不全の合併率,腎不全合併例の臨床像,腎不全合併例と非合併例の臨床病理学所見の差異を検討した.劇症肝炎39例における腎不全の合併は18例(46.2%)と高率にみられ,かつ,臨床経過のあらゆる時期に認められた.腎不全合併時には,電解質,酸塩基平衡の異常などが多くの症例でみられたが,収縮期圧80mmHg以下の低血圧は1例も認めなかつた.腎不全合併例と非合併例で臨床所見,検査所見,DIC合併率に差は認められなかつたが,剖検例の腎組織所見では腎不全合併例で急性尿細管壊死に相当する所見が多く認められた.