日本消化器病学会雑誌
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原発性胆汁性肝硬変における抗体産生に及ぼす女性ホルモンの影響
池本 吉博溝口 靖紘加藤 寛子筒井 ひろ子新井 孝之宮島 慶治関 守一山本 祐夫門奈 丈之森沢 成司
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1984 年 81 巻 10 号 p. 2526-2531

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抄録

健常ヒトおよび原発性胆汁性肝硬変 (PBC) 患者から分離した末梢血単核細胞を pokeweed mitogen (PWM) で刺激すると, いずれの場合もTNP化したヒツジ赤血球に対する抗体 (抗TNP-SRBC) が産生され, 誘導された抗体産生細胞数は両者間で有意の差を認めなかつた. しかし, 単核細胞をPWMで刺激する際に, 同時にエストロゲンを添加すると, 健常ヒトの末梢血単核細胞においては, 1×10-8mg/ml~1×10-6mg/mlの範囲で抗体産生が増強され, 5×10-7mg/mlの添加でその増強効果は最大であつた. これに反して, PBC患者の場合はエストロゲン (5×10-7mg/ml) をPWMとともに加えても, エストロゲンによる抗体産生の増強は認められず, 1×10-5mg/mlという高濃度のエストロゲンの添加で抗体産生細胞数は最高値を示した.
以上の結果は, PBCの病態の少くとも一部に, 女性ホルモンに対する応答の差で示されるような何らかの免疫学的異常が関与していることを示唆している.

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