日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
急性肝不全実験モデルによる肝細胞障害の検討
I. 肝内粘着性細胞による肝細胞障害の誘導について
筒井 ひろ子溝口 靖紘宮島 慶治阪上 吉秀東森 俊博関 守一山本 祐夫原 久子巽 陽一門奈 丈之森沢 成司
著者情報
キーワード: 肝不全, Kupffer 細胞
ジャーナル フリー

1985 年 82 巻 4 号 p. 603-609

詳細
抄録

Propionibacterium acnes (P. acnes) をラットの静脈内に注入し, 一定の期間をおいて少量の lipopolysaccharide (LPS) を静注すると, 肝に広範な壊死巣が出現する. この急性肝不全実験モデルにおける肝障害誘導機構を解析するため, 肝内粘着性細胞の機能変化を検討した.
P. acnes 加熱死菌静注7日後に, 肝臓から粘着性細胞を分離し, LPSを添加して48時間培養すると, 0.5μg/ml以上のLPSを添加した場合には粘着性細胞培養上清に著明な肝細胞障害活性が認められた. これに比較して, P. acnes 非投与ラットの肝臓から粘着性細胞を分離してLPSで同様に処理した場合, 細胞培養上清中に見られる肝細胞障害活性は低かつた.
以上の結果から, 二段階の処理によつて活性化された肝内粘着性細胞は肝細胞障害因子を産生分泌し, この因子が本実験モデルにおける急性肝細胞障害の誘導に重要な役割を果すことが示唆された.

著者関連情報
© 財団法人 日本消化器病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top