抄録
消化性潰瘍で広範囲胃切除をうけた患者から試験食投与下に消化管カプセルを用いて上部小腸液を採取し, 細菌叢と脂肪便発生の関係を検討した. 上部小腸液の細菌数が108/ml以上になると脂肪便がみられるようになり, とくに嫌気性菌が108/ml以上になると脂肪便を呈する症例が多い. 細菌数と糞便脂肪排泄率の相関を菌群•菌属別に検討したところ, Bacteroidaceae, Eubacteria, Streptococci に強い正の相関が得られた. なかでも Bacteroidaceae は検出率•菌•相関係数が最も高かつた. これら菌群•菌属には, いずれも抱合胆汁酸に対する脱抱合能を有する菌株が存在し, 菌が異常増殖した場合は脂肪のミセル形成相が障害されて脂肪便を発することが予想された.