1988 年 85 巻 10 号 p. 2178-2186
活動期クローン病 (CD) の病変部に隣接し光顕的に構造が保たれた大腸粘膜を用い, 分泌型IgA (sIgA) の円柱上皮細胞内輸送について免疫組織化学的に検討した. 光顕的には, secretory component (SC) およびIgAは粘膜上皮全体の basolateral membrane と刷子縁基部に局在を認めた. 免疫電顕的には, 管腔側へのSCとIgAの輸送•分泌を示す像を認めた. SCが基底側細胞膜から粘膜固有層へ遊離した像も認めた. また, ホモジナイズした粘膜のsIgA含有量は, CD群で有意に高値を呈した. 活動期CDの粘膜上皮では, sIgAが管腔側へ輸送•分泌されているにもかかわらず, その産生亢進によりsIgAは腸粘膜より血中へ逆流すると考えられた.