1988 年 85 巻 5 号 p. 1082-1087
ラット胃粘膜における prostaglandin E2 (PGE2) の細胞局在について, 免疫組織学的手法を用いて検討した. その結果, PGE2の特異染色は, 粘膜被蓋上皮細胞の管腔側表層, および腺体部, 腺底部の上皮細胞, 特に, 壁細胞に強く認められた. しかも, それらは, 壁細胞においては, 細胞質内に顆粒状の存在様式を示した. また, PG合成酵素阻害剤である indomethacin を前投与することによつて, 前述の陽性所見は著明に減弱した. 以上のことより, 壁細胞が, 細胞保護作用, 酸分泌抑制作用を有するPGE2を合成する可能性が強く示唆された. このことは, 酸分泌細胞である壁細胞が同時に胃粘膜防御機構においても重要な役割を果たしていることを想定させるきわめて興味深い知見と考える.