1989 年 86 巻 5 号 p. 1031-1036
ラット胃粘膜の単離被蓋上皮細胞 (F1), 主細胞 (F2) および壁細胞画分 (F3) を用いた in vitro の実験系で, 各細胞におけるエタノール傷害と16,16-dimethyl PGE2 (dmPGE2) の保護作用につき検討した. F1においてエタノールは濃度依存性に細胞傷害性を発揮し, 50%細胞傷害作用濃度 (ED50) は14.93%であつた. 15%エタノールによる細胞傷害の程度は, F1, F2, F3の各細胞画分間で差異は認められなかつた. 10-6MのdmPGE2はすべての細胞画分において有意に15%エタノールによる細胞傷害を抑制した. 以上の成績から, dmPGE2は胃粘膜細胞に対する直接的な保護作用を有し, この作用が, 特定の細胞に限られたものでないことが示唆された.