1990 年 87 巻 1 号 p. 8-15
ラットの腹腔動脈を血管クリップにて狭むことにより, 胃に一時的な虚血を引き起こし, それを開放して血流再開を行うことによつて胃における虚血-再灌流モデルを作製した. 虚血-再灌流によつて胃粘膜に斑状, 線状の出血性びらんを認めた. 虚血単独に比べ虚血再灌流で胃粘膜障害の増強および胃粘膜内チオバルビツール酸 (TBA) 反応物質の増加を認めた. 虚血-再灌流による胃粘膜障害はスーパーオキシド•ディスムターゼ (SOD) 単独, カタラーゼ単独, SODとカタラーゼ併用およびアロプリノールの投与によつて阻止された. TBA反応物質の増加はSODとカタラーゼ併用群およびアロプリノールの投与で抑制された. これらの結果により, 虚血-再灌流によつて生ずる胃粘膜障害の成因としてフリーラジカルおよび脂質過酸化の密接な関与が強く示唆された. 本虚血-再灌流モデルにおけるフリーラジカルの発生源としては, ヒポキサンチン-キサンチンオキシダーゼ系がより重要であると思われた.