日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
ラット硬変肝細胞の代謝応答能に関する研究
橋本 博之
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1990 年 87 巻 6 号 p. 1392-1400

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抄録

四塩化炭素 (CCl4) によるラット硬変肝を作製し, 硬変肝細胞の初代培養を行い, 硬変肝細胞の, (1)尿素合成, 蛋白合成及びDNA合成における膵ペプチドホルモンに対する応答性, (2)DNA合成のEGFに対する応答性を健常肝細胞と比較検討し, さらに, (3)排泄能を fluorescein diacetate, (4)薬物水酸化能を antipyrine, (5)抱合能を unconjugated bilirubinをそれぞれ用いて比較検討した. グルカゴンに対する尿素合成, インスリンに対する蛋白合成の応答性は, 共に健常肝細胞に比し低下していたが, 細胞増殖因子であるインスリン, EGFに対するDNA合成の応答性は, 健常肝細胞に比し亢進していた. 一方, fluorescein diacetate の代謝排泄能は, 両者ともほぼ同様であつたが, antipyrine の代謝能及び unconjugated bilirubin の抱合排泄能は, 健常肝細胞に比し低下していた. 以上の結果より, 硬変肝細胞は健常肝細胞よりも増殖能力に富むものの蛋白合成能, 解毒抱合能において劣る細胞であることが明らかにされた.

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