1992 年 89 巻 2 号 p. 493-497
生検あるいは polypectomy により得られた各種大腸病変86症例のパラフィン切片におけるproliferating cell nuclear antigen (PCNA/cyclin) 陽性細胞の分布を免疫組織化学的に検討した. 正常粘膜においては, 陽性細胞はおおむね増殖帯に一致して分布し, 過形成でもほぼ同様であつた. これに対して, 腫瘍性病変では, 陽性細胞の分布が表層部に向かつて拡大する傾向がみられた. さらに, 良性病変に比べて, 境界病変•腺癌では, より浅層への拡大や表層部への露出もみられる傾向が認められた(χ2: P<0.01). 以上の結果, PCNA染色法は増殖細胞に特異的であり, 大腸の腫瘍性病変における良•悪性判別のための簡便な補助手段として有用である可能性が示唆された.