1995 年 92 巻 7 号 p. 1037-1050
肝硬変症の肝性脳症患者8例に対して難吸収性の合成二糖類lactitol 1日36gを3~4週間投与し,糞便内細菌叢の変動と肝性脳症に対する臨床効果を検討した.lactitolの投与により,嫌気性Bifidobacteriumの占有率(総菌数に占める割合)の著明な上昇(投与前7.1%→4週後46.0%(p<0.05)),Lactobacillusの菌数の増加を認めた.一方,アンモニア産生菌Bacteroides,Clostridiumと総好気性菌の菌数はほとんど変動しなかったが,それらの占有率は投与前に比べて低値で推移した.また,糞便pHの低下傾向,排便回数の増加傾向,軟便傾向を認めた.肝性脳症に対する臨床効果では血中アンモニア値,脳症の昏睡度,羽ばたき振戦などの改善を認めた.