日本消化器病学会雑誌
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中心静脈高カロリー輸液による消化管付属リンパ組織の機能低下とその対策に関する実験的研究
中崎 久雄田島 知郎三富 利夫藤井 功一上條 あけみ
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1996 年 93 巻 11 号 p. 806-812

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抄録

経中心静脈高カロリー輸液(TPN)栄養法により腸管粘膜は萎縮し,その結果消化管付属リンパ組織(GALT)は退行性変化を来し,腸管粘膜の萎縮が認められる.TPNでラットを2週間飼育すると,腸管のパイエル板の個数の減少と萎縮および胸管リンパ球(TDL)数の減少が認められた.これらの機能低下の改善を目的として,TPN群にPSKを連日,1000mg/kg経口投与(PSK群)しGALTの変化を検討した.PSK群ではパイエル板数の個数の減少および萎縮も軽減され,TDLの数もTPN投与群に比較して多かった.パイエル板およびTDLのリンパ球サブセットはTPN群に比較して,PSK群でPanTおよびTh細胞比率で有意に高かった.胆汁中,門脈血中のS-IgA値もTPN群で低下したが,PSK群では胆汁中で有意差を認め門脈血中で高い傾向を示した.パイエル板の免疫組織学的検討で,PSK投与によってIL-2,MHC-IIやTh cellの形質細胞の染色陽性率は上昇し,免疫能の低下予防が推察された.PSKはTPN施行によるGALT機能抑制の防止の作用を有することが示唆された.

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