2020 年 24 巻 1 号 p. 43-52
カンボジアにおいて,学校保健室を中心とした学校保健体制作りのプロジェクトが実施された.このプロジェクトでは日本からの渡航教員がモデル地区学校保健指導者に対して来日研修と来日後の養成セミナーを実施した.学校保健指導者は来日後研修後に予めセミナーへのいくつかの要望を提出した.本研究ではその要望の中から「手洗い,保健室整備,児童の転倒等の講義,けがの手当の演習,校内整備の評価」のセミナーを実施し,成果を検討することを目的とする.
対象はカンダール州カンダルスタン郡学校保健リーダー校9校と行政担当者を含む学校保健指導者19名であった.データ収集は質問紙調査とし,セミナーの前後調査を実施した.分析方法は,Wilcoxsonの符号付き順位検定,けが手当の演習と継続的な校内の取り組み調査は,記述的に検討された.
結果,講義の理解や手洗い,保健室整備は概ね良好な結果であったが,医学的知識を伴うけがの手当ての理解は,医学教育を受けていない教員らには困難さがあった.
今後は,医学的な知識を含む保健テキストやトイレ・手洗い場モデルを活用した学校保健教育の支援と現地での継続的なフォローアップと助言が必要である.