2019 年 4 巻 2 号 p. 95-102
【目的】テント部に発生する硬膜動静脈瘻では,静脈瘤形成,ガレン大静脈へ流出をきたすものは出血の危険因子として考えられ,本症例のようにシャント部位から特異な静脈流出路をとることは少なく,詳細な構造把握が求められるため,文献的考察を含めて報告する. 【症例】73 歳,女性.脳室内出血を伴った脳内出血で発症,脳血管撮影にてfalcotentorial junction 硬膜動静脈瘻と診断された.シャントがstraight sinus のGalen の近傍であり,テント上の静脈に逆流し,左右の静脈流出路の内,右側はlongitudinal hippocampal vein を経由して基底核に埋没する静脈瘤に繋がっていた.Feeder である左中硬膜動脈と右後頭動脈から血管内塞栓術を施行し,シャントの完全閉塞が得られた.【結語】falcotentorial junction 硬膜動静脈瘻の静脈流出路をテント上に認め,右側はlongitudinal hippocampal vein を経由した稀な症例であり,本症例の出血原因と治療戦略を考えるために静脈流出路やシャントの構造全体の詳細な把握が重要であった.