2022 年 7 巻 2 号 p. 62-68
【目的】後下小脳動脈(posterior inferior cerebellar artery)communicating artery(PICA com A)の破裂動脈瘤に対し,n-butyl cyanoacrylate(NBCA)塞栓を施行した1例を報告する.【症例】48歳男性,突然の頭痛を呈し,頭部CTで第4脳室内出血を認めた.入院時の血管造影では出血源を同定できず,第20病日の血管造影で左PICAのtelovelotonsillar segmentから分岐するPICA com Aに動脈瘤を認めた.右PICAは無形成で,PICA com Aが右小脳を灌流していた.瘤の経時的形態変化から再出血の危険性が高いと判断し,他の小脳動脈からの側副血行の発達を期待して,第23病日に33%NBCAを用いて瘤をPICA com Aとともに塞栓した.術後左小脳に小梗塞を認めたが,右側には梗塞巣の出現はなく,第33病日独歩自宅退院した.【結論】PICA com Aに発生した破裂動脈瘤に対してNBCAによる塞栓術を行い,重篤な合併症なく良好な転帰を得ることができた.