脳血管内治療
Online ISSN : 2424-1709
Print ISSN : 2423-9119
ISSN-L : 2423-9119
7 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 加藤 美奈子, 浅井 琢美, 荻 紗綾, 杉本 学, 荒木 悠里, 高橋 立夫, 須崎 法幸
    2022 年 7 巻 2 号 p. 57-61
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    [早期公開] 公開日: 2022/07/11
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】全身麻酔中の保温は,全身合併症の予防に重要であるが,これまで破裂脳動脈瘤コイル塞栓術中に体温が低下する経験をした.今回保温目的で導入した,アルミ薄膜付きの覆布(以下,サンステート)の体温低下予防効果につき,後ろ向きに検討した.【方法】2017年5月から2018年6月の期間に,全身麻酔下で緊急コイル塞栓術を受けた患者50名のうち,来院時心肺停止,入室前38.0°C以上の発熱例,来院から24時間以降に治療を開始した例を除いた33名を対象とした.サンステートを導入前後で2群(導入前=A群,後=B群)に分け,BMI, 血管撮影室入室時体温,退室時体温,治療時間について比較検討した.【結果】対象例はA群14例,B群19例であり,年齢(58.4歳vs 57.8歳),性別(女性:78.6% vs 63.2%),BMI(22.6 kg/m2 vs 23.2 kg/m2), 入室時体温(35.3°C vs 35.5°C),治療時間(169分vs 190分)については両群に差はみられなかった.退室時体温はB群で有意に高く(35.5°C vs 36.1°C, p=0.04),体温低下例はB群で有意に少なかった(43% vs 5%, p=0.03).【結論】サンステートの導入により,全身麻酔下における破裂脳動脈瘤コイル塞栓術中の体温低下を予防する効果が確認された.覆布の使用は,血管内治療時の体温低下予防に有用であることが示唆された.

症例報告
  • 井上 佑樹, 海老瀬 広規, 横佐古 卓, 木附 宏, 兵頭 明夫
    2022 年 7 巻 2 号 p. 62-68
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/06
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】後下小脳動脈(posterior inferior cerebellar artery)communicating artery(PICA com A)の破裂動脈瘤に対し,n-butyl cyanoacrylate(NBCA)塞栓を施行した1例を報告する.【症例】48歳男性,突然の頭痛を呈し,頭部CTで第4脳室内出血を認めた.入院時の血管造影では出血源を同定できず,第20病日の血管造影で左PICAのtelovelotonsillar segmentから分岐するPICA com Aに動脈瘤を認めた.右PICAは無形成で,PICA com Aが右小脳を灌流していた.瘤の経時的形態変化から再出血の危険性が高いと判断し,他の小脳動脈からの側副血行の発達を期待して,第23病日に33%NBCAを用いて瘤をPICA com Aとともに塞栓した.術後左小脳に小梗塞を認めたが,右側には梗塞巣の出現はなく,第33病日独歩自宅退院した.【結論】PICA com Aに発生した破裂動脈瘤に対してNBCAによる塞栓術を行い,重篤な合併症なく良好な転帰を得ることができた.

  • 長濱 篤文, 川上 太一郎, 劉 兵, 岡本 光佑, 下本地 航, 坂本 竜司, 田上 雄大, 廣瀬 智史, 夫 由彦
    2022 年 7 巻 2 号 p. 69-74
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/06
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】脳静脈流出路の狭窄が,頭蓋内圧亢進症の一因になっていることがある.我々は,上矢状静脈洞狭窄を伴った頭蓋内圧亢進症に対し,圧較差を確認した上で,静脈洞内ステント留置を施行した1例について報告する.【症例】52歳男性.左眼の視力異常,頭痛を自覚.うっ血乳頭を認め,MRVで上矢状静脈洞の狭窄を認めた.腰椎穿刺では初圧35cmH2O以上と頭蓋内圧の亢進を認めた.保存的加療を開始したが奏功せず,静脈洞内ステント留置を行った.狭窄部前後で16 mmHgの圧較差を認めていた.術直後から頭痛,視野障害の改善を認めた.【結論】静脈洞狭窄を伴う頭蓋内圧亢進症に対し,静脈洞ステント留置はひとつの選択肢として,検討すべきである.

  • 大前 智也, 柳澤 俊晴
    2022 年 7 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/24
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】特発性頚部内頚動脈解離は,本邦では稀な疾患である.頭蓋内主幹動脈閉塞を伴った特発性頚部内頚動脈解離の治療は困難であり,血管内治療の有効例を報告し,考察する.【症例】74歳男性,突然発症の右片麻痺,運動性失語で搬送された.MRIで左内頚動脈急性閉塞と診断され,経静脈的血栓溶解療法に続き,血管内治療を行った.術中撮影で解離腔が描出され,頚部内頚動脈解離と診断し,その遠位には高度屈曲を認めた.血栓回収術で頭蓋内内頚動脈を再開通させ,引き続き造影遅延を呈した解離部高度狭窄にステント留置術を行った.屈曲部に解離または血栓が疑われた.慢性期の造影CTで屈曲部には解離が残存しており,遠位への伸展はなく安定していた.【結論】頭蓋内主幹動脈閉塞を伴った特発性頚部内頚動脈解離は,血管内治療が有効と考えられるが,術中には高度屈曲,血栓を伴いやすく,適切なデバイス選択と慎重な手技が求められる.

  • 鐵尾 佳章, 増尾 修, 高瀬 香奈
    2022 年 7 巻 2 号 p. 84-89
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/23
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】脊髄症を呈したテント部硬膜動静脈瘻(dAVF)に対し,n-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)を用いた経動脈的塞栓術(TAE)を行い,治癒し得た1例を報告する.【症例】65歳男性.徐々に進行する両下肢麻痺で発症した.MRIで延髄から頚髄にかけ浮腫像を認め,血管撮影で右中硬膜動脈(MMA)や内頚動脈(ICA)など複数の動脈がテント部に短絡し,脊髄静脈へと還流していた.ICAのmeningohypophyseal trunk(MHT)起始部でバルーンを拡張し,flow control下にMMA petrosquamous branchから12.5%のNBCAを用いたTAEを行い,術直後はシャントがわずかに残存したが,術後21日目に血管撮影で完全閉塞を確認し得た.【結語】脊髄症を呈したテント部dAVFに対し,NBCAを用いたTAEが有用であった.

  • 鈴木 崇宏, 太田 圭祐, 平賀 孝太, 片岡 弘匡, 加野 貴久
    2022 年 7 巻 2 号 p. 90-95
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    [早期公開] 公開日: 2022/06/30
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】以前より,カテーテル親水性ポリマー塞栓の報告と,それによる肉芽腫性反応が示されたという報告がなされている.今回我々は,血栓回収後に病理解剖を行った症例において,無症候性親水性ポリマー塞栓の分布を脳標本より検討できたため報告する.【症例】81歳女性.突然の意識障害,左半身麻痺で来院し,NIHSSは15点であった.MRI画像で右中大脳動脈領域に急性期脳梗塞を認め,rt-PA静注療法と機械的血栓回収療法を施行したが,再開通は得られず,術後27日目に腸管壊死により死亡した.脳病理標本より肉芽腫性変化を伴う散在性親水性ポリマーを確認し,無症候性親水性ポリマー塞栓症と診断した.病理学的に親水性ポリマー塞栓は患側大脳半球脳梗塞領域だけではなく,正常組織内にも認められた.【結論】親水性ポリマー塞栓は,従来の認識よりも頻度が高い合併症として周知が必要であり,症状を呈した場合の治療を用意する必要がある.

  • 田中 達也, 道脇 悠平, 山根 文孝, 若宮 富浩, 指田 涼平, 藤原 廉, 下地 一彰, 末廣 栄一, 小野田 恵介, 河島 雅到, ...
    2022 年 7 巻 2 号 p. 96-101
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/20
    [早期公開] 公開日: 2022/08/03
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】脳動脈瘤コイル塞栓術の際に施行した経頭蓋電気刺激運動誘発電位(transcranial motor-evoked potential: TCMEP)モニタリングによる稀な合併症,咬傷の1例を報告する.【症例提示】53歳男性.突然の頭痛,めまいで発症し,精査にて脳梗塞,左後下小脳動脈解離性動脈瘤を認め,TCMEPモニタリング下にステントアシストコイル塞栓術を施行した.TCMEP刺激時の咬筋収縮による舌裂傷,歯牙欠損を合併し,圧迫による止血が困難であったため,舌を3針縫合した.【結論】血管内治療は,抗血栓療法下に施行することが多く,軽微な傷であっても止血に難渋することがある.術前に舌が咬合部に来ないよう位置を確認することや,柔らかいバイトブロックとティースガードの併用等,TCMEPによる咬傷の予防に細心の注意を払うべきである.

追悼文
feedback
Top