2022 年 7 巻 2 号 p. 75-83
【目的】特発性頚部内頚動脈解離は,本邦では稀な疾患である.頭蓋内主幹動脈閉塞を伴った特発性頚部内頚動脈解離の治療は困難であり,血管内治療の有効例を報告し,考察する.【症例】74歳男性,突然発症の右片麻痺,運動性失語で搬送された.MRIで左内頚動脈急性閉塞と診断され,経静脈的血栓溶解療法に続き,血管内治療を行った.術中撮影で解離腔が描出され,頚部内頚動脈解離と診断し,その遠位には高度屈曲を認めた.血栓回収術で頭蓋内内頚動脈を再開通させ,引き続き造影遅延を呈した解離部高度狭窄にステント留置術を行った.屈曲部に解離または血栓が疑われた.慢性期の造影CTで屈曲部には解離が残存しており,遠位への伸展はなく安定していた.【結論】頭蓋内主幹動脈閉塞を伴った特発性頚部内頚動脈解離は,血管内治療が有効と考えられるが,術中には高度屈曲,血栓を伴いやすく,適切なデバイス選択と慎重な手技が求められる.