日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2F03
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一般演題
巡回職場健診における精密検査受診率向上の試み
江並 朋子福迫 由紀子草野 健窪薗 修
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抄録

〈はじめに〉
 当センターでは,施設内外で多種の健康診断を行なっている。大きく分けて施設内では,人間ドック,施設職場健診,生活習慣病予防健診,施設外では巡回型として巡回健診(老人保健法に基づく),巡回職場健診(主にJAおよびJA関連企業を対象とした)がある。これらの健診の精密検査受診率は,コースにより大きく異なっている。中でも巡回職場健診はもっとも低い精密検査受診率を示している。巡回職場健診については,精密検査受診率の向上対策として,結果報告会から2か月後および5か月後に受診不明者に対し「追跡調査票」を発送する等様々な対策を講じてきた。しかし,H15年度でも42.4%と低い精密検査受診率に止まっている。
 今回精密検査受診率向上のために追跡調査票の効果について検討を行なったので報告する。
〈対象及び方法〉
 H13年度からH15年度巡回職場健診(精密コース)を対象とした。この3年間の総受診者数は14,819名,うち要精密検査者は5,569名(37.6%)であった。これらの要精密検査者の受診動向および特性について分析した。
〈結果〉
1.全体の精密検査受診率は,H13年度41.3%,H14年度42.9%,H15年度42.4%と低い割合で推移し,総体としてはほぼ不変であった。
2.特に精密検査受診率の低い項目は,尿酸34.2%,糖代謝35.2%,聴力検査36.5%,脂質37.7%であった。
3.比較的高い精密検査受診率を示した項目は,腹部超音波検査67.3%,胸部X線検査63.2%,便検査59.3%であった。
4.「追跡調査票」の効果は,追跡対象者に対し1回目7.6%,2回目7.2%であった。
5.項目毎の効果を見てみると,1回目では,腹部超音波検査が14.3%と最高値であり,尿酸が5.3%と最低値を示した。2回目でも,最高値は腹部超音波検査の11.1%で,膵臓系が4.9%と最も低かった。
6.性別では,ほぼ全ての項目で男性の精密検査受診率が低く,「追跡調査票」の効果も小さかった。特に血圧,脂質,糖代謝など生活習慣改善の効果の期待できる項目で顕著に低かった。
 女性では,3か月以内に精密検査受診をする者の割合が高かった。
7.男性では加齢とともに精密検査受診率も「追跡調査票」の効果も大きくなる傾向にあったが,女性では年齢による大きな差は認めなかった。
〈まとめ〉
 予想されたとおり,男性の若年ほど精密検査未受診者が多い傾向にあり,この層は「追跡調査票」の効果も小さかった。
 健診受診自体が,職場の命令でのものであり,健康への関心は薄いと考えられる。しかし,JA職員の健康行動は組合員への影響が小さくないことから,若いうちから健康管理に自覚を持ってもらう必要がある。
 今後は,若いJA職員への健康教育も重要不可欠と思われる。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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