日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: workshop-1
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ワークショップ-1
病院、施設、訪問看護を含みインフルエンザ、ノロウイルス対策の実際
池田  しづ子
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抄録

病院、施設、訪問看護等で、インフルエンザ、ノロウイルスの効果的感染予防対策とは「感染経路の遮断」の実践です。具体的実践のポイントは標準予防策、手洗い/乾燥、その場で密封処理です。 インフルエンザの感染経路は飛沫/接触感染です。感染経路を具体的場面で考えてみましょう。患者の咳やくしゃみでインフルエンザウイルスは環境に散らばります。人ごみや、1m以内での接触者は空間で漂うウイルスを吸い込むことで感染します。また、ヒトは咳やくしゃみを反射的に手で受止めたり、鼻をかんだりします。患者はインフルエンザウイルスを受止めたその手でドアノブ、蛇口、エレベーターボタン等を触れます。次にドアノブや蛇口等を利用するヒトにウイルスが付着する可能性が高く、そのまま手洗いせず、物を食べたり、唇や鼻、目などに触れることによって感染の可能性が出てきます。それは病院、施設、訪問看護等医療機関だけでなく、家庭、学校、職場、公共施設を問いません。ドアノブ、蛇口等を触れたり、汚物の処理をした後、場所を移動した直後等は、入念な手洗い/乾燥が何よりも予防に効果的です。したがって咳など頻回の方が病院玄関に来られたときは、感染源の早期封じ込め対策としてサージカルマスクの貸与/着用指導と、咳を受け止めた手の手洗い/乾燥を具体的に指導します。また病院環境は多くのヒトが頻繁に触れるところは念入りに湿式清拭を行い、環境を清浄化しておくことも感染経路の遮断対策として効果的です。 ノロウイルスの感染経路は汚染された二枚貝等の生喫食による食中毒、糞口感染、不潔な調理器具や汚染手指による接触感染、噴水状吐物による飛沫感染です。ノロウイルスの感染予防対策はインフルエンザの飛沫/接触感染経路の遮断対策と同じです。さらにもう1点、重要な対策があります。それは、感染しても嘔吐や下痢を発症しない健康保菌者は感染発症者同様にノロウイルスを約1ヶ月間排便中に排泄し続けます。したがって健康保菌者は保菌している自覚を持ち、感染経路の遮断目的で手洗い/乾燥できるかがポイントです。しかし、自分が健康保菌者か否かの判断は困難です。そこで標準予防策として、感染症がある・なしに関わらず、湿性の血液、体液、排泄物等は感染性があるものとして取扱うことが感染予防対策に効果的です。また、入念な手洗い/乾燥とは、誰にでも、どこでも簡単にでき、接触感染経路を断つ、有効かつ安価で効果を期待できる方法です。手洗い/乾燥は医療従事者と入院患者や利用者、家族、面会者等にも具体的指導/教育をすることがさらに病院環境の清浄維持と感染経路の遮断対策に有効です。手洗いは手洗ミスを補う6つのポイントを意識して手洗い技術を高め、継続させることです。手の乾燥は微生物の伝播を防ぎ、手荒れ予防にも効果的です。手洗い/乾燥は患者・家族・仲間を感染から守り、自分も保護される効果的な対策です。さらに、その場で密封処理とは、汚染オムツの交換時、排泄物がもれないように丸め、作業者が汚染オムツを開封したプラスチック袋へ直接投棄/密封処理することです。この方法は生活環境であるベッド周囲の汚染を最小にすることができます。また悪臭残存を防ぎ、快適空間を維持できます。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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