日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: RKS2-8
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全身性の間代性痙攣で発症したアルコール性乳酸アシドーシスの1例
前田 宗伯大河内 昌弘郷治 滋希岩間  糾勝野  哲也浅田 馨服部 孝平後藤 章友神谷 泰隆大野 恒夫
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抄録

アルコール性乳酸アシドーシスはアルコール常用者で栄養不良と脱水が契機となり発症する病態である.治療の遅延や著明な代謝性アシドーシスを呈する場合、死の転帰をとることが多いとされているが、日本では、ウェルニッケ脳症に比較すると、その疾患の認知度は低い。今回、我々は、全身性の間代性痙攣で発症したアルコール性乳酸アシドーシスの1例を経験したので報告する。症例は、62才男性。高血圧の既往あり、アルコール依存症、大酒家である。H22年11/21に、嘔気、および、1~2分間の全身性の間代性痙攣を認めるようになり、救急搬送された。来院時、意識はほぼ清明だがやや受け答えが曖昧であった。診察中、突然、2~3分間の全身性の間代性痙攣を認め、意識消失した。尿検査では、ケトン体1+、蛋白2+、潜血-、血液検査では、WBC 10200、CRP 0.1、AST 40IU/L、ALT 21IU/L、γ-GTP 60IU/L、amylase 62IU/L、BS 99mg/dl、NH3 26μg/dl、Ca 8.7mg/dl、Mg 1.6mg/dl(↓) であった。血液ガス検査では、pH 7.316, PaO2 97.3, PaCO2 33.2, SaO2 96.1%, BE -8.5, アニオンギャップ 24.8mmol/Lとアニオンギャップの開大を認める代謝性アシドーシスを認めた。特殊検査では乳酸40.4mg/dlと上昇し, vitB1 41ng/mlと正常, アセト酢酸12.0, β-ヒドロキシ酪酸10.0, 総ケトン体22.0と正常値であった。頭部CT&MRIに異常認めず、腹部CT上、肝臓・膵臓・脾臓に異常を認めなかった。以上より、アルコール性乳酸アシドーシスと判断し、ブドウ糖含有の補液、VitB12製剤、Mg製剤、抗痙攣剤の治療を開始した。入院後、代謝性アシドーシスは重炭酸塩の投与なしに急速に改善され、乳酸値も正常化した。加えて、入院後、痙攣発作の再燃は見られず、後遺症なく、改善した。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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