日本農芸化学会誌
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日本産介殼虫の化學的研究(第20報)
コブカヒガラムシ(Tachardina theae Green et Mann.)の炭水化物並に蝋質物に就いて
河野 通男丸山 隆之輔
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1938 年 14 巻 11 号 p. 1364-1370

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抄録

コブカヒガラムシの炭水化物として,Lignin, Cellulose, Pentosan及Mannan等を檢出せりこれ等の成分は既報の數種のものと共通なる成分なり.
蝋質物中の成分としてはMelissyl alc., Ceryl alc., Cocceric acid, Melissic acid, Mpristic acid,η-Hentriakoatan,Dodecenic acid, Tetradecylenic acid及びGlycerin等を分離證明せり.
Cocceric acid, Myristic acid, η-Hentriakontan, Dodecenic acid及びTetradecylenic acidは本蝋質物中に於て,初めて檢出せし成分なり.前報に於て記載せるが如く本昆虫は多量の色素を含有し,コセニールカビガラムシに近似する性質あることを報告せるが,果して蝋質物の域分に於ても既載の共通成分Cocceric acid, Dodecenic acid並にTetradecylenic acidを得たり.
尚不飽和脂肪酸を檢出せるは本昆虫に於て初めて認められし事實にしてGlycerinの存在を併せ考察するとき蝋質物中に多少の脂油の混在が想像せらる.尚これ等不飽和脂肪酸並に色素の構造に就いては後報せんとす.又高位飽和炭化水素の含有並に樹脂酸の含有が痕跡に止りし事は既報のカヒラムシ類に比して特異の例と云はざる可からず.
前報と綜合し本昆虫に於ても既報の數種カビガラムシと同様,無機成分,硬蛋白質,織維素,木質及び蝋質物等が複雑なる結合をなして構成せられるものなることが認めらる.

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