抄録
前報に於て枸櫞酸の分解に用ひた菌株,即ちAsp. niger(Thom. 1015號)及びAsp. oryzae(Thom. 1011號)を用ひ著者が先に大腸菌類細菌でPolycarbon酸代謝の中心なりと指摘するAconit酸を基質として其の代謝生成物を檢索した結果,該酸を唯一のC-源とする胞子よりの培養では主に枸櫞酸,蓚酸の集積するのを確認し,同じく菌蓋培養では枸櫞酸,蓚酸量は減少し,代りに少量乍ら醋酸及びl-林檎酸の生成を確認した.而してこの差異は主としてO2の接觸面に對する條件の差異によるものと説明し,十分なる酸化條伴下では,細菌類では見られなかつたAconit酸→枸櫞酸及び低級分子酸→枸櫞酸の作用が主に行はれるが,酸素の不十分なる條件下では細菌類にて著者が示す如きAconit酸→C2酸+C4酸の分解がこれ等の黴類でも行はれ得ることを指摘した.