日本農芸化学会誌
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糖蜜の酒精發酵に關する研究
(第1報)糖蜜の非発酵性還元物質について
七字 三郎御園 光信
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1954 年 28 巻 3 号 p. 217-223

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抄録

糖蜜の加熱による糖への影響として,主としてJACKSON-MATHEWS及びZERBANの方法を参考として,非醗酵性還元物質を測定し加熱程度による醗酵性糖の増加並びにその糖の種類及び消長を試験した.
(1) 糖蜜の加熱によりその中の非醗酵性還元物質が減少することをZERBAN法の測定で明らかにした.加熱条件の高くなると共に,一方では全糖値の減少が伴うが,非醗酵性還元物質の減少率に比し結果的に醗酵性糖の増加となる.その条件は100°, 2hrs.或は1kg, 30 min.程度迄であるが,なお糖蜜の変性有無,貯蔵期間によつても大きく影響された.
(2) 糖蜜の加熱により,又醗酵液の塩酸加水分解により非醗酵性還元物質が減少する原因について,加熱度による糖蜜中のfructose並にglucoseの消長をJACKSON-MATHEWS法により追究して,此の際の還元物質の増加はglucoseよりもfructoseの増量に主として因るものであることを知つた.即ち糖蜜中の非醗酵性還元物質にはfructoseと結合しているものが多いということが推定され,これが加熱によつて比較的容易に遊離して結果的に醗酵性糖の増加となるものと思われる.

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