1959 年 33 巻 6 号 p. 424-427
米粒中の塩素の分布移動を,少量の試料について簡単に観察するため,米粒の組織染色法を考案した.
米の切片を硝酸銀のアルコール溶液に侵漬後,硝酸性アルコールで洗浄,一定時間紫外線にさらして感光後,ヒドロキノンのアルコール溶液で還元現像した.この方法は標本の保存もよく,米粒内の塩素移動状況を適確に捉えうる.
染色法によって,米粒内のぬか部の塩素が,胚乳部に大部分移行する現象を確認した.果種皮,糊粉層,胚芽から塩素の移動する状況を,やや詳細に観察した.米粒の塩素の移動の観察には,胚芽部からの塩素の離脱に注目することが,最も簡易なみちと思われる.