日本農芸化学会誌
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フノランの塩化カリウム分別により示される化学的不均一性
藤木 寛之
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1973 年 47 巻 7 号 p. 435-441

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抄録

マフノリ原藻(Gloiopeltis tenax)から熱水抽出, CPCを用いて精製したツノラン(CF)について,塩化カリウムによる分別を行ない,次の結果を得た.
(1) CFは, KP, KSP, KSSの3画分よりなり,それぞれK+に対するsensitivityを異にする. KPは室温(約28°C)において, 0.5% CF溶液に最小濃度(0.9M)の塩化カリウムを加えて沈殿する画分であり,その上澄に残る多糖(KS)の0.5%溶液に,高濃度(3.OM)の塩化カリウムを加えて沈殿する画分がKSPである.またCF溶液から, KPを沈殿させるのに必要な塩化カリウムの濃度と, CF溶液の濃度の対数との間には,直線関係が成立し,温度の上昇とともに, KPの沈殿に要する塩化カリウムの濃度は高くなる.これら3画分の比率は, KP:KSP:KSS=52:13:35であった.
(2) KP, KSP, KSS 3画分のモル比(Gal:Agal:SO3Na)は,それぞれ1:0.72:1.11, 1:0.62:1.27, 1:0.08:1.20で,化学的組成を異にする.また, CFのアルカリ処理により,硫酸基含量が減少してAgal含量が増加し, K+による沈殿画分の比率が高くなるが, KP, KSP, KSS 3画分に対するアルカリ処理の影響はそれぞれ異なり, Aga1の増加率はKSSが著しく高い.
(3) KP, KSP, KSS 3画分は,それぞれ旋光度を異にする多糖で, KP, KSP両画分は左旋性, KSSは右旋性を示す.
以上の実験結果から,フノランが不均一な多糖であることを明らかにした.

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