日本農芸化学会誌
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大豆たん白ゲルの粘弾性について
桑畑 美沙子中浜 信子
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1975 年 49 巻 3 号 p. 129-134

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抄録

1. 大豆分離たん白ゲルのレオロジー的性質を得るため,実験を行なった.比較のため,卵白ゲル,寒天ゲルについても実験を行ない検討した.
2. 圧縮型平行板粘弾性計によりクリープ曲線を得,粘弾性の解析を行なった. 20%大豆たん白ゲル,卵白ゲル, 1.5%寒天ゲルはいずれもフックの弾性体,フォークトの粘弾性体,ニュートンの粘性体からなる4要素模型で示された.弾性率(EH, EV)は105~106dyn/cm2,粘性率(ηV, ηN)は107~109 poise,遅廷時間は25~30秒であった.大豆たん白ゲルのEHは寒天ゲルと同程度であったが, ηNは寒天ゲルより大であり, EV, ηVは寒天ゲルの方が大であった.
3. レオロメーターを用い,記録曲線とテクスチャー特性値を得, 3種のゲルの破断特性を比較した.大豆たん白ゲルの硬さは,寒天ゲルの約3倍であった.また大豆たん白ゲルは凝集性が大であり,卵白ゲル,寒天ゲルは小であった.付着性は卵白ゲルにのみ認められた.
4. 大豆たん白ゲルは温度上昇に従い,フック体の弾性率,ニートン体の粘性率が減少したが,フォークト体の粘弾性率には明らかな傾向は認められなかった.
5. 大豆たん白ゲルのマスター・カーブおよびシフトファクターが得られた.すなわち,大豆たん白ゲルは12.4°C~59.8°Cの温度範囲で温度・時間の換算則が成立つことが認められた.シフトファクターと絶対温度の関係から,みかけの活性化エネルギー29kcal/moleが求められた.また遅延スペクトルが求められ,遅延時間は1~105秒の間に分布することが認められた.

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