日本農芸化学会誌
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ネパールヒマラヤ山系原産チーズの化学的微生物学的特徴
鴇田 文三郎細野 明義大谷 元中路 洋子
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1976 年 50 巻 12 号 p. 599-605

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抄録

1.本実試では, 3種のChurbiならびに1種のRauを用いた.供試のChurbiは,すべて水分含量と脂肪含量が低く,蛋白質含量が高いことを特徴としており,蛋白質はいずれも固形分の80%以上を占めていた.
一方, Rauの水分含量は68.60%と非常に高く,蛋白質,脂肪がそれぞれ23.96%, 6.91%であった.
2. Sephadex G-100カラムでチーズ蛋白質を篩別すると,チェダーチーズやカマンベールチーズでは,それぞれ4つと3つのピークが認められたのに対し,供試のChurbiならびにRauでは, void volume中に流出する高分子蛋白質のピークが主体をなしており,チーズ蛋白質の分解がほとんど進行していないことを認めた.
3. 3種のChurbiにおける細菌数は,いずれも水分含量のきわめて低いことを反映して,その数はごくわずかである.一方, Rauには細菌,酵母が棲息していることが認められ,グラム陽性桿菌1株(B-1株)と酵母2株(Y-1, Y-2株)を主要菌叢として分離した.
4.分離菌株のうち, B-1株にのみ,乳糖資化性が認められた.また, 3株の分離菌は脱脂乳培地に培養した場合,ペプトン化を示さず, Y-1株, Y-2株では脱脂乳は凝固性を示さなかった. 3株とも弱い蛋白質分解性を有していることも,同時に認められた.しかし,上述の諸結果を総合的に考慮すると,ネパール原産のチーズは微生物の関与をほとんど受けていない,いわば酸カゼインとアルブミン系蛋白質から成る蛋白質食品であると結論づけられる.

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