1977 年 51 巻 6 号 p. 371-379
カイコの核酸消劣化系の調節機構を検討中に,蛹抽出液が消化液ヌクレアーゼのDNA分解作用のみを特異的に阻害することを見出した.
(1) インヒビターを蛹から単離し,薄層クロマトグラフィー,アミノ酸自動分析,赤外線吸収スペクトル,元素分析および酵素活性の阻害実験の結果から,その本体はL-ロイシンであると同定した.
(2)l-ロイシンは9.6mMにおいて本酵素のDNA分解作用のみを最高60%阻害するにもかかわらず,そのRNA分解作用や低活性型プロ酵素(中腸ヌクレアーゼ)および他起源の酵素の活性に対してはまったく効果を示さなかった.
(3) L-ロイシンによる阻害は不拮抗的であり,消化液ヌクレアーぜ・DNA・L-ロイシンの3者複合体の形成によることが示された.
(4) 前報とこれらの結果から,カイコの核酸消化系は,(1)活性発現の際における低活性型プロ酵素(中腸ヌクレアーゼ)からの活性化,および(2)L-ロイシンによる阻害という2段階の調節を受けていることが示唆された.