日本農芸化学会誌
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Chlorella regularisによる銅イオンの濃縮
坂口 孝司堀越 孝雄中島 暉
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1977 年 51 巻 8 号 p. 497-505

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抄録

クロレラによる銅イオン濃縮の実態を明らかにするため,2,3の解析を行なった.
(1) 銅イオンはクロレラ生育の直線増殖期に対してよりも,初期の生育過程(誘導期および対数期)に対して強い阻害作用を示した.
(2) クロレラ生育に対する重金属イオンの毒性の強さをCu2+と対比した結果,Hg2+>Cu2+>Fe2+>Cd2+>Cr2+>Zn2+>Ni2+>Co2+>Mn2+の順になり,Cu2+はHg2+に次いで強い毒性を示した.
(3) クロレラによる銅イオンの取り込み量は,銅イオンが施用された直後の120分間に急激に増加し,その後,時間が経過しても取り込み量はほとんど増加しなかった.
(4) 培地中の銅イオンの量が多くなると,それに比例して取り込み量も増加することが認められた.
(5) 単位藻体量当りの銅イオンの取り込み量は藻の濃度が薄い方が濃い方よりも大きかった.
(6) Na+,K+,NH4+,Mg2+,Ca2+,Co2+,Zn2+Mn2+がCu2+と共存すると,クロレラの銅イオン取り込みは阻害され,その阻害効果は2価イオンの方が1価イオンより大きかった.
(7) クロレラ体内に銅が多量取り込まれると,体内のカリウムは急速に溶出し,これとは逆に,ナトリウム含量は増加した.
(8) ESRにより,クロレラ体内に取り込まれた銅の電子状態について解析した結果,藻体内に取り込まれた銅には2価の状態のものが存在し,また,培養開始4時間以後においては,藻体中の全銅量に対する2価銅の比率はほぼ一定になっていることが認められた.

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