日本農芸化学会誌
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ワイン中のミネラルと有機酸の含有量とその相関について
清水 純一島津 善美渡辺 正澄
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1979 年 53 巻 6 号 p. 203-209

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抄録

(1) 国産ワイン(18点)およびドイツワイン(28点)のミネラルおよび有機酸を分析し,両成分の相関および品質との関連について検討した.
(2) ドイツワイン中のカリウム,マグネシウムは,それぞれ平均, 1309, 150mg/lで,高級ワインほど多い傾向がみられた.カルシウムは平均109mg/l,ナトリウムで17mg/lであった.また鉄は平均3.0mg/l,マンガンは1.5mg/lで両者とも多く,銅は平均0.3mg/l,亜鉛は平均0.8mg/lで,少なかった.ケイ素は2~30mg/lの範囲であった.
ドイツワインの有機酸では,リンゴ酸(M)は平均3.5g/l,酒石酸(T)は平均2.6g/lであり,この2つの酸で全体の80%程度を占めている.また(M)/(T)は,高級ワイン程大きく1~5の範囲であった.
(3)国産ワインのカリウムは平均780mg/l,マグネシウム,カルシウムともに平均100mg/lで,いずれもドイツワインに比較してかなり少ない.ナトリウムは平均34mg/lで,ドイツワインの2倍程度多かった.その他,鉄;6.7,銅;0.4,亜鉛;0.2,マンガン;0.8mg/l程度であった.有機酸では,酒石酸が平均2.3g/l,リンゴ酸が1.5g/lであり,また(M)/(T)比は1以下で,ドイツワインに比較してかなり小さい値であった.
(4) ミネラル(カリウム,マグネシウム,カルシウム)と主要有機酸との相関を検討した.ドイツワインにおいては,カリウムに対して(M)/(T)が最も高い正の相関(γ=0.770)を示した.酒石酸は高い負の相関(γ=-0.752)を示した.また,リンゴ酸は低い正の相関(γ=0.426)であった.マグネシウムは酒石酸に対しγ=-0.538, (M)/(T)に対しγ=0.585の相関が認められた.カルシウムはリンゴ酸に対してのみ正の相関(γ=0.595)を示した.ドイツワインではとくにカリウム,マグネシウムが有機酸組成と高い相関を示し,ワインの品質に大きく関与していることが確認された.国産ワインでは,カリウムが(M)/(T)に対し, γ=0.458の,カルシウムが(M)/(T)に対し, γ=0.605の相関を示したが,ドイツワインで認められるような高い相関関係は見られなかった.

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