日本農芸化学会誌
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プロスタグランジンE2合成反応の連続化
中原 東郎樋口 勝彦平田 博文石川 一彦中里 敏西村 功
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1985 年 59 巻 6 号 p. 597-603

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抄録

アラキドン酸より, PGE2を生成するPG合成酵素系の連続反応を,ポリアクリルニトリル共重合体の中空糸膜システムを用いて行った.その利点は, (1)生成物と酵素とが分離されていること, (2)基質のアラキドン酸は膜をほとんど通らない(透過率4%)一方,生成物のPGE2は十分透過する(透過率87%)ため基質の利用効率が高いこと, (3)反応操作上の各種因子(基質濃度,滞留時間,補酵素などの添加方式)による収率の向上,が挙げられる.その結果,活性持続時間を試験管内での反応の20分間から, 100分間程度まで延長させた.しかしその収率は10%程度で,試験管内で反応させた場合の1/3にとどまった.このことはPG合成酵素系の不安定性が,連続反応にかかわる反応操作面からの阻害軽減策によって十分な改善が得られる性質のものではないことを示している.すなわちプロスタグランジン合成酵素系においては,酵素反応器の開発に先立って,補酵素として作用するヘモグロビンが酵素を失活させる問題(4)を解決すること,あるいは強力な安定化法を見出すこと,が要求される.

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