抄録
醤油麹のpHに及ぼすクエン酸量の影響,麹菌のクエン酸代謝について調べ,次の結果を得た.
(1) 麹のクエン酸量は麹pHと負の相関関係にあった.
(2) 麹のクエン酸量は散水量,培養湿度,菌株によって大きく異なった.クエン酸は低散水量,低温培養麹ではクエン酸が生成,蓄積され,高散水量,高温培養麹では消費,減少する傾向があった.
(3) トレーサー実験より,A. oryzaeを使用した100%散水,23°C培養で,添加したリンゴ酸,ピルビン酸よりクエン酸が生成され,添加したクエン酸は消費されず麹中にクエン酸が蓄積されることが示された.しかし,A. sojaeを使用すると同条件で,添加したクエン酸がわずかに消費されておりA. oryzaeと若干異なっていた.一方,180%散水,33°C培養では両菌株ともに添加したクエン酸は消費,減少した.
(4) クエン酸代謝関遵酵素活性はA. oryzae,A. sojaeともに,100%散水,23°C培養麹では180%散水33°C培養麹に比較してクエン酸シンターゼ活性が高く,アコニターゼ活性が低い傾向にありクエン酸の生成,消費と関連していた.