日本農芸化学会誌
Online ISSN : 1883-6844
Print ISSN : 0002-1407
ISSN-L : 0002-1407
アスコルビン酸によるJ1ファージ不活化に対するリジンおよびグルタミン酸の促進作用の機序
村田 晃横尾 金浩大嶋 一夫加藤 富民雄
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 60 巻 1 号 p. 9-14

詳細
抄録
J1ファージを用いて,AsAによるファージ不活化に対するリジンおよびグルタミン酸の促進作用の機序について研究し,次のことがわかった.
(1) AsAとこれらのアミノ酸によるファージ不活化は,分子状酸および微量の遷移金属が存在し,AsAが自動酸化される条件下で起こる.
(2) この不活化には,AsAの自動酸化過程で生成する酸素ラジカルが関与している.すなわち,不活化反応にフリーラジカル反応機構が関与している.
(3) 酸素ラジカルのうち,このファージ不活化に直接関与するのは,OHである.
(4) これらのアミノ酸は,AsAの自動酸化を促進する.
(5) 以上のことから,AsAによるファージ不活化に対するこれらのアミノ酸の促進作期の機序は,AsAの自動酸化がアミノ酸によって促進されることによって,OHの生成量が増大し,そのためにAsAによるファージ不活化が促進されることであると結論される.
(6) この機序は,既報のグリシンの場合と同じである.
なお,その他のいくつかのアミノ酸についても検討し,同じような結果が得られたので,ファージ不活化促進作用の機序は,アミノ酸の種類をとわず普遍的なものであると結論される.さらに,D系のアミノ酸についても同じような不活化促進がみられ,その作用の機序も同じであることがわかった.
著者関連情報
© 公益社団法人 日本農芸化学会
前の記事 次の記事
feedback
Top