本稿の課題は,食料リスクの軽減に向けて,農業経営が取り組むべき課題を考察するとともに,中長期的な視点から次世代農業経営の展望を試みることである.食料リスクを,食料汚染リスクと食料不足リスクとに大別して,総合的な分析および考察を行った.主要な結論として,食料汚染リスク軽減には,世界水準のGAPへの取り組みが求められており,その基礎となる情報マネジメントを新しい農作業としてとらえる視点を提示するとともに,家族農業経営および企業農業経営の取り組み実態と課題を明らかにした.また,食料不足リスクについては,わが国全体のエネルギーおよび栄養素について需要と供給の両面から長期的展望を行うことの重要性を指摘し,その基礎概念を提示した.さらに,食料農産物の主要な供給主体として企業農業経営が存在感を増し,財務的には他産業中小企業に比肩しうる存在になっているが,政策的な支援がその収益性を支えていることを統計的に明らかにした.