日本の水稲,小麦,大麦,大豆の年収量増加率は海外に比べ小さい.特に,2000年以降,大麦や大豆の収量はむしろ低下している.その要因には,収量よりも品質が追求されたことや,湿害の影響,さらに,長期の田畑輪換による水田の地力低下がある.これらは以前から指摘されてきたことであるが,本質的な改善は図られていない.一方,今後,担い手の耕作面積の大幅な拡大が予想されており,そのような状況のもとで,スマート農業と呼ばれるICT,RT,AIを活用した技術に期待がかけられている.しかし,スマート農業技術それ自体には技術体系や作付体系を変革する機能はない.そのため,水田農業の生産性向上と営農展開に向けては,ICT,RT,AI の普及とともに,新たな技術体系と水田利用方式の構築を図っていく必要がある.