国立のぞみの園紀要
Online ISSN : 2435-0494
その人が人生を理解する取組み,その人の人生を理解する取組み
-ライフストーリーワークを使った実践-
大塚 雅人金井 美穂桑原 さやか四方田 武瑠
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2017 年 10 巻 p. 9-18

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抄録

のぞみの園の入所利用者 の 平均年齢 は 60 歳を超え ,利用者と 家族 と の つ な が り も 変化し ,入所前の 情 報等 ,利用者のこれまでの 生 活歴 を 知ること が 難 し く なっ て き て い る .ま た 利用者本人から過去の情報を聞くことも ,知 的障 害 が 重い方が多く ,利用 者 の 人 と な り を 知 ることが 難しい .本 研 究で は ,利用者をより深く正確に知るための支援者の引継ぎのツールと し て も 有 効 的 に 機 能 す る と い わ れ て い る ラ イ フ ス ト ー リ ー ワ ー ク の 実 践 を 通 し , 筆 者 自 身 が 利用者の 理 解 を 深 め る こと に 繋 が る か を 実 証 す るこ と を 目的と し た 研 究 であ る .な お ,考察の 視点として ,① ラ イ フ スト ー リ ー ワ ー ク に よ り 支援 者 は 利 用 者 を よ り 深 く理 解 で き る か ,② 周 囲でワークの実践を見ていた支援者が ,利 用 者 をよ り 深 く 理 解 す る こ と に繋 が る か ,③ ワーク を通し ,中年期,高 齢 期 の重 度 知 的 障 害 者 が 過 去 を振 り 返 る こ と に 繋 が る か ,といった3 者 の 視点で考察を 行った .その 結 果 ,① 中・重 度 の 知 的 障 害 が あ っ て も ,職 員と 一 緒 に ラ イ フ ス ト ーリーワークを行うことで ,過去の情報の理解につながる .② ラ イ フ ス トー リ ー ワ ー ク を 行 う 時間を持つことで ,過 去の 情 報 だ け で な く ,現 在の 利 用 者 の 人 と な り を より 深 く 理 解 す る こ と につながる ,③ 利 用 者 にと っ て も 職 員 の 人 と な りを 理 解 す る こ と に つ な がり ,より好ましい関 係性の構築につながる ,ま た ④定期的な職員とのライフストーリーワークは 中・重 度 知 的 障 害 者 ,あるいは高齢期になっ た知的障害者の日中活動や余暇活動としての展開が期待できる ,こ と が 示唆され た .

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© 2017 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園

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https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/deed.ja
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