国立のぞみの園紀要
Online ISSN : 2435-0494
ふつうの暮らしを求めて
-のぞみの園地域移行 10 年の軌跡-
古川 慎治湯浅 智代梶塚 秀樹
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2014 年 10memorial 巻 p. 106-121

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抄録

「独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみ の園」は、平成 15(2003)年 10 月に旧法人「特殊法人心 身障害者福祉協会」から、499 人の利用者と職員を引き継 ぐ形で設立された。旧法人は昭和 46(1971)年に開所し、 全国から重度・最重度知的障害者、及び知的障害と身体 障害を併せ持っている重度・重複障害者を受け入れて、親 亡き後まで支援を続ける終生保護の施設としての役割を 担ってきた。 しかし、現法人の運営重点目標は、「重度の知的障害者 に対する自立のための先導的かつ総合的な支援を提供」 することであると明記され、また同時に、厚生労働大臣より 「入所者の地域への移行を推進することにより入所者数を 3 割から 4 割程度縮小する」旨の中期目標が示された。こ れにより、当時入所していた利用者について、地域に移行 してふつうの暮らしが出来るように総合的な支援に取り組 むこととなった。 平成 15(2003)年 10 月から平成 25(2013)年 3 月まで の間、年々、入所利用者の高齢化、心身機能の低下が進 む中にあって、入所利用者および保護者・家族等の意向 を尊重しつつ、障害特性を考慮した受入れ先の確保に努 める等、一人ひとり丁寧に手順を踏んで地域移行に取り組 んできた。その結果、合計 150 人、当初利用者の約 3 割 が地域移行するに至った。また、地域移行した者に対して は、生活の適応状況をフォローアップしている。こうしたの ぞみの園の地域移行の方針は、表 1 のように決定した上 で、移行先としては本人の出身地を考えた。その理由は、 保護者・家族との面会等の際に本人の保護者・家族への 強い思いを見て取れること、保護者・家族が高齢化してい るので面会を容易にするために無理なく日帰りできる圏内 に移行することが望ましいこと、移行後は近くに保護者・家 族がいれば本人が新しい生活に安心感を持つことができ ると考えられること等があげられる。

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© 2014 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園

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