2012 年 5 巻 p. 83-88
本研究は,国立のぞみの園利用者の診療記録をもとに高齢知的障害者の疾患についての情報を整理し,知的障害者の高齢化に対応した医療的ケアおよび予防的支援の方法を検討するための基礎資料を得ることを目的とした.調査対象は,1971~2011年度までに亡くなったのぞみの園利用者170人とした.死亡原因および疾患の状況等を整理したところ,高齢化に伴い死亡者数は年々増加しており,その死亡原因の40%以上を肺炎等の呼吸器系疾患が占めていることが明らかになった.一方,癌や脳血管性の疾患による死亡者は一般統計に比べて少数であった.死亡するまでに罹った疾患は,一人あたり平均で7.7であり,50歳未満では消化器系疾患が,50歳以上では脳・神経系の疾患や内分泌栄養及び代謝疾患,呼吸器系疾患が多かった.これらの結果から,特に50歳以上での呼吸器系疾患を予防するための口腔機能の評価やケアの必要性が示唆された.