抄録
今後の高齢知的障害者の生活を支えるサービスや支援の在り方を検討するために,障害者支援施設に入所している65歳以上の知的障害者の身体・認知機能等と支援上の課題を把握するための悉皆調査を実施した.1,506事業所からの回答を整理した結果,65歳以上の入所者は全体の15.7%(うち知的障害のある入所者は10.2%)を占めていることが示された.また,前期高齢者の段階で多くの利用者に身体機能の低下や認知症様の症状による生活上の困難が生じており,65歳になる前から高齢者としての支援を必要としていることが示唆された.各事業所ではそれぞれの高齢化の実態に応じて,バリアフリー化や平時及び緊急時の医療体制整備,介護技術等に関する職員研修等の高齢化対策に着手していたが,高齢に適した日中活動の充実や,様々な年代が混在する状況への対応等には遅れも見られた.また,身体・認知機能の低下が生じる前からの予防的な取り組みについても今後の検討課題であると考えられた.