主催: 日本薬理学会
会議名: 看護薬理学カンファレンス 2018 in 福岡
回次: 2
開催地: 福岡
開催日: 2018/11/17
医療分野の治療戦略は、歴史的にみれば、ほとんど経験則に則ってきました。 かつては、どんな治療法も、どんな薬も「経験的に効果がありそうだから採用し ている」という程度のものでした。科学技術が進歩した現代でも(表面上は学術 的証拠が求められるようにはなっていますが)やはり経験則が主体であることは変 わりません。全身麻酔薬はよい例です。麻酔薬がなぜ効果を発揮するのでしょう か。薬理学的な作用機序は完全には解明されていません。効くことが事実だか ら使っているわけです。理由もわからず使っているとは、よくよく考えてみれば怖 い気がします。しかし、これを「怖い」と感じること自体、私たちがいかに科学的 な説明(に見えるような仮説)に慣れ切ってしまっているかを意味しているのでは ないでしょうか。本来はどんな薬でも「有効かつ安全」ならばよいわけです。この 意味で、私は「科学は経験則を超えることは(将来にわたってさえ)ないだろう」 と考えています。
私はそんな「科学」に従事する者として、このような講演の機会をいただきま した。講演では、研究者として「科学的な知見」に基づいてお話したいと考え ております。何をお話するかはこの原稿を書いている現時点では決まっていませ ん。しかし、「脳の構造や仕組みを知ること」がいったいどんな変化を、それが 精神的なものであれ、実質的なものであれ、仕事上であれ、日常であれ、ともかく、 どんな変化を私たちにもたらすかを実験してみたいと思います。
人間は自分のクセに無自覚であるという事実に無自覚です。他人のクセには容 易に気づくことができても、案外と、自分自身のクセに気づかないまま自信満々に 生きているものです。最大の未知は自分自身です。そんな自分の「脳のクセ」に ついて知っておくのは、けっして悪いことではありません。看護の現場でも、つい 脳のクセにはまって、知らず知らずに非効率な言動や、取り返しのつかない失敗 をしてしまうこともあると思います。そんな脳のクセについて、「本当の自分の姿に 気づかないまま一生を終えるなんてもったいない」という前向きな姿勢で、講演に 向けて準備したいと考えています。