看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2018福岡
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シンポジウム1
  • 村嶋 幸代
    セッションID: 2018.2_S1-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/10/10
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    NP(Nurse Practitioner)は、米 国では約 20 万 人が医 師と連 携 / 協 働し、 薬剤処方や検査指示を含めて活躍している。 日本では、大分県立看護科学大学が、全国に先駆けて 2008 年から大学院 修士課程で NPを教育してきた。その質を保証するために、NPを教育する他の 大学院と日本 NP 教育大学院協議会(略称:NP 協議会)を設立し、統一試験 も実施してきた。NP の制度化を働きかける中で厚労省の「チーム医療の推進に 関する検討会」が設置され、「看護師の特定行為に係る研修制度」が創設され た(2015 年 10 月)。これを受けて、NP 協議会の加入校は、概ね 21 区分全て の特定行為を修士課程の NP 教育で教授している。修了生は、ほぼ全ての特 定行為を実施でき、「診療看護師(NP)」と称している。

    目指す像は、臨床推論に基づき症状マネジメントをタイムリーに実施できる看 護師であり、①包括的健康アセスメント能力(一部の検査オーダーを含む)、② 医療処置管理の実践能力(一部の処方を含む)、③熟練した看護の実践能力、④看護管理能力、⑤チームワーク・協働能力、⑥医療保健福祉の活用・開発 能力、⑦倫理的意思決定能力の 7 つの能力を持つことである。患者に寄り添 い、責任を持つ実践力を養うために、Physical Assessment、Pharmacology、 Pathologyを強化すると共に、自分の能力の限界を認識し、連携する態度ももつ。診療看護師(NP)は、約 350 人が、プライマリケア領域の病院、診療所、老 人保健施設、訪問看護ステーションやクリティカルケア領域の ICU や救急医療の 現場で活躍している。特に、老人保健施設にNP が勤務し始めてから、その施 設から入院する患者が半減した、看取りができるようになった等の成果が上がっ ている。

    一方で、限界もある。特定行為研修制度創設により、予め手順書を取り交わ していれば、特定の医行為ができるようになった。しかし、薬剤の処方は、日本 では認められていない。慢性疾患を多数抱える高齢者では、症状緩和にも薬剤の力が大きい。NP が薬の選択・決定・処方に係わることにより、患者に与えるメリット・デメリット等について、日本薬理学会で討議されること、このシンポジウムが明 日につながり、NP の実力が発揮され、引いては、看護職の薬理学への造詣が 深まり、患者の安全・安楽につながっていくことを期待している。

  • 赤瀬 智子
    セッションID: 2018.2_S1-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/10/10
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    日本の医療事故の報告件数(日本医療機能評価機構)は、2017 年は 3,598 件あり、10 年以上その報告が増加しています。その医療事故の当事者は看護 師が1番多く、特に経験年数 5 年以内の看護師が引き起こしています。事故内 容としては、治療や処置に関する事項 26.7%、薬剤そのものに関する事項 8.6% であり、その発生場面は、静脈注射>内服>末梢静脈点滴の順で発生が多く、 その他、薬の過剰投与、薬剤の勘違い、患者の勘違い、投与方法の勘違い、 確認・観察怠った、連携できていなかった、技術・手技の未熟、知識の不足な どが挙げられています。ヒヤリ・ハットにおいても、1 年間に31,218 件(2017 年) の報告があります。その内、薬剤に直接関する事項は41.4%と1 番多く、ヒヤリ・ハッ トの当事者も看護師が1番多いです。つまり、看護師による薬の医療事故、事 例が非常に多いという実態があります。

    薬の作用機序や薬物動態についてどのくらい理解していますか。薬の知識が つくと患者の身体的状態によって治療の効果や起こり得る副作用の予測がつき、 何をいつ観察したらよいか、何を注意したらよいかがよりみえてきます。また、薬 の使い方や投与方法、つまり与薬の科学的根拠もわかってきます。今回は高齢 者によく使われる薬を例にとって看護師に求められる薬の知識と技術について一 緒に考えてみたいと思います。

    患者にとっての最適な治療とは何でしょうか。看護師は患者の生活からも薬の 効果を考え、適切な与薬が提案できたらよりよいと考えます。

  • 塩月 成則
    セッションID: 2018.2_S1-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/10/10
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    私は、診療看護師(NP、以下 NPとする)の立場からお話させて頂きます。大分県立 看護科学大学大学院博士前期課程 NP コースを2010 年に修了した。在学中にニューヨー ク大学などでの研修や、厚生労働省の業務試行事業などに参加し、NP 実践の検証に協 力してきた。NP 教育の根幹に「必要とされる診療行為を、医師や他の医療従事者と連携・ 協同し、効果的、効率的、タイムリーに実践できる能力を備えた看護師」を養成するため に、大学院において「個々の患者の医療ニーズを包括的に正確に判断し、倫理的かつ科 学的な根拠に基づき、必要とされる診療行為を的確に実施することができ、患者および患 者家族の QOL の向上に寄与できる人材を育成する」がある。 臨床薬理学の習得は、そ の competency の一つを形成するためのもので、NP の臨床実例を通じて紹介する。70 代、 男性、胃癌にて胃全摘後、施設に入所中で、微熱と食欲低下が続いていた。往診医の判 断は、高齢男性の胃癌術後に伴う食欲低下、老衰で、経過観察指示であったが、家族 が何とかしたいという思いで当院受診。NPとして、頭から足先までの身体診察を行い、寡 黙な性格な方であったが、家族の目には、いつもとわずかに異なる意識レベルであること、 qSOFA2 点から、肺炎に伴う敗血症の可能性を考え、検査、レントゲンを行い、繰り返した 誤嚥で器質化した肺炎と判断し、治療開始した。また、「気管支鏡=侵襲的=癌の術後の 老衰で適応外」という固定概念を捨てて、患者家族と相談し、苦痛を与えず呼吸循環に影 響を及ぼさないぎりぎりの鎮痛鎮静下に、気管支鏡使用し誤嚥物を回収した。同時に嚥下 リハビリ、NSTと相談し、食事形態、分割食を検討し直し、現在、元気に施設に戻ってい る。いつもとどこか違うという家族の観察を重要視し、詳細な身体診察から、検査につなげ、 前医の「高齢者の癌の術後=老衰の進展」という固定概念を捨て、患者家族の基本的対 応から、治療に結びついた。他の事例では、60 代、女性、脊髄損傷にて、上肢の耐え難 い疼痛があり、プレガバリン、NSAIDs 処方がとなっていた。家族と上肢の他動運動にて 筋緊張を和らげたが、効果は限定的であった。それ以上の介入は、リハビリや周囲の支え とのことで、景色が見られるような場所での気分転換を図った。NPとして、更なる手はない ものか検討したところ、薬理学的にNMDA 受容体阻害作用のある薬剤の使用に可能性が あることを、海外文献で検索し、咳止めであるデキストロメトルファンの NMDA 受容体阻害 作用に期待し、倫理的な面について医師、患者家族で相談し、使用を試み疼痛がかなり 軽減した。昨今、ガイドラインにないことは、家族の申し出に対しても、思考停止し、拒否し てしまう医療の風潮がある。それは、責任の問題や、無害の法則からは正しいが、ガイドラ インを偏重しすぎ、考えることを止めてしまうことは、ともすると、医療の人間性を失ってしまう のではないか?と感じることがある。このような例は、枚挙に暇が無いが、小さな積み重ねで、 医療に貢献したく実践を続けたい。

シンポジウム2
  • 高橋 良輔
    セッションID: 2018.2_S2-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/10/10
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    尿をためて排出するはたらきは膀胱とその先にある尿道でおこなわれ、主に自 律神経が調節しています。尿をためる時は、交感神経の末端からノルアドレナリ ンという神経伝達物質が放出され、膀胱は緩み、尿道は収縮して尿がたまります。 一方、尿を排出する時は、副交感神経の末端からアセチルコリンという神経伝 達物質が放出され、膀胱は収縮し、尿道は緩んで尿が排出されます。これらの メカニズムに異常が生じると、さまざまな排尿に関わる症状がでてきます。

    排尿に関わる症状は、「頻尿・尿失禁などの蓄尿症状」と「排尿困難・尿勢 低下などの排尿症状」に分けることができますが、患者 QoLをより低下させるの は前者であることがわかっています。過活動膀胱はその代表的な疾患です。「急 に抑えきれない尿意が起こり我慢できない」「頻尿がある」「我慢しきれず尿が 漏れてしまう」といった症状が特徴であり、本邦の 40 歳以上の 12.4%に認めら れ、800 万人から1000 万人の患者さんがいることが推定されています。治療には、 尿意を数分ずつ我慢する「膀胱訓練」や「骨盤底筋体操」などの行動療法に 加えて、女性では「抗コリン薬」や「β3アドレナリン受容体作動薬」などの薬物 療法を行うことが一般的です。効果はほぼ同等とされていますが、抗コリン薬で は「口内乾燥、便秘、目の調節障害」、β3アドレナリン受容体作動薬では「血 圧上昇、頻脈」などの副作用にも注意する必要があります。また、抗コリン薬は 特殊な緑内障(閉塞隅角緑内障)の患者さんでは禁忌となっています。男性の 場合、過活動膀胱の原因のひとつとして前立腺肥大症が考えられます。主な 症状は「尿の勢いが悪い」「尿が途中で途切れる」などの排尿症状ですが、約 半数の人に尿意切迫感、頻尿、尿失禁などの過活動膀胱の症状がみられます。

    このような場合、「抗コリン薬」や「β3アドレナリン受容体作動薬」ではなく、まず「αアドレナリン受容体作動薬」を用います。前立腺や尿道の平滑筋を緩ませて、 尿の通過をよくする薬剤ですが、これによって過活動膀胱の症状もかなりよくなり ます。よくならない場合は、「抗コリン薬」や「β3アドレナリン受容体作動薬」を 追加することもあります。

    本講演では、過活動膀胱を中心に高齢者の生活の質を左右する蓄尿症状の メカニズムとその薬物療法について、薬理学的視点からお話ししたいと考えてい ます。

  • 栁迫 昌美
    セッションID: 2018.2_S2-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/10/10
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    2016 年度の診療報酬改定において新設された「排尿自立指導料」の目的は、 尿道留置カテーテルを一日でも早く抜去し、尿路感染を防止するとともに排尿自 立に導くことと言われています。

    排尿自立とは、排尿管理の方法の如何にかかわらず、自力で排尿管理が終 結できるということで、排尿ケアチームに求められていることは、介護予防につ なげる社会的自立排尿に向けたケア(ソーシャルコンチネンスケア)の提供です。 ソーシャルコンチネンスケアの提供により人としての尊厳が守られ、ADL の維持・ 増進が図れ、寝たきり患者の減少にもつながります。さらに、尿路感染症の防 止により早期退院も期待できます。

    排尿ケアチームの構成メンバーは施設基準では、医師、看護師、理学療法 士または作業療法士となっており、当院でもその構成で取り組みを行っています。 加算の対象は、尿道カテーテルが留置されている入院患者のみとなっていま すが、下部尿路機能障害の原因は多岐にわたるため、尿道カテーテルを留置 していない患者の中にも下部尿路機能障害で困っている方も多くおられます。認 知力の低下や運動機能の低下によって起こることもありますし、疾患からの症状 として起こる場合、原疾患がなくても起こる場合、薬の副作用として起こる場合 などがあります。副作用として排尿障害を起こす代表的なものとして、頻尿・尿 失禁治療薬、過活動膀胱治療薬、総合感冒薬、抗精神病薬・抗うつ薬、不 整脈治療薬などがあり、これらの排泄障害の治療薬管理および排泄に副作用を 及ぼす薬剤の管理も大変重要になります。そのため、排尿ケアチームの構成メンバーには薬剤師の参加の必要性を痛感しています。 今回、当院における排尿ケアチームの取り組みを提示します。

  • 小林 里沙
    セッションID: 2018.2_S2-3
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/10/10
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    尿路感染症は医療関連感染症の約 4 割を占め、そのうち66%~ 86%が尿道 留置カテーテル等の器具が原因となっている。リスクの高い患者では、腎盂腎炎、 さらには敗血症に至ることがある。また、カテーテルに起因する尿路感染症のうち、 二次的菌血症による死亡率は 10 ~ 30%と推定されており、カテーテル管理は感 染対策において重要である。

    尿路感染症の感染対策は、感染経路を理解したうえで、適切な感染対策を 行うことで効果が得られる。尿道留置カテーテル挿入時は微生物を侵入させな いように清潔操作の徹底を行うこと、不要な尿道留置カテーテルは早期に抜去す ることが重要である。尿道留置カテーテルが必要な場合は、尿流が妨げられな いように維持することや尿の逆流を防止する必要がある。また、尿の廃棄時は 手指や着衣が汚染される可能性が高いため、適切な個人防護具(PPE)の着 用と適切なタイミングでの手指衛生を行うことで、医療従事者を介した微生物の 伝播を防ぐことも重要である。尿道留置カテーテル管理は、頻度の高いケアであ り、感染リスクも高い。日頃の管理が患者の感染リスクを大きく左右することを理 解しておく必要がある。

    また、地域包括ケアシステムが進められるなか、感染対策においても地域連 携は重要である。患者は、様々な医療機関、介護施設、在宅サービス等を 利用している。そのため、感染対策も1つの医療機関で完結するものではない。 感染拡大防止のために、感染対策が必要な患者の情報提供を施設間でも適切 に行っていく必要がある。特に、薬剤耐性菌は急性期医療機関だけの問題で はなく、市中でも増加しており、介護施設等でも感染対策が求められることがあ る。感染拡大を防ぐためにも、地域における施設間のネットワークを構築しておく ことが重要である。

特別講演
  • 真田 弘美
    セッションID: 2018.2_SP
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/10/10
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    褥瘡対策は、今後の超高齢者人口の急増と相まって、焦眉の急といわれて いる。国の医療を動かす診療報酬・介護報酬は平成 30 年度には同時改定さ れたが、褥瘡対策に最も大きく影響するのは、介護報酬による褥瘡対策であろ う。中でも自立支援・重症化の予防において、介護保険の理念や目的を踏まえ、 安心・安全で、自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスを実現 するために、「褥瘡の発生予防のための管理や排泄に介護を要する利用者へ の支援に対する評価」が新設された。これによって、介護施設、たとえば特別 養護老人ホーム等の入所者の褥瘡(床ずれ)発生を予防するために定期的にリ スクアセスメントを行い、その結果に基づき褥瘡対策を行うことが期待されている。 従来は診療報酬がカバーする病院などが褥瘡対策の中心であった。しかし、こ のように介護施設への褥瘡対策も介護報酬が新設されることにより、病院、施設、 在宅の褥瘡対策が一元化されることになり、日本の褥瘡発生率は激減するであ ろう。その期待を実現するためには、上記のような政策に頼るだけでなく、社会 の要請に応じたケア技術や医療機器の開発は必須といえる。ここでは褥瘡対策 2018と題して、平成 30 年度の診療報酬の改定も踏まえて、 最も新しい褥瘡対策についての技術や医療機器に関する情報を提供したい。

    1)褥瘡発生予測はブレーデンスケールが妥当か?

    2)スキンテアは褥瘡発生のリスクか?

    3)体圧分散はロボットができるか?

    4)治癒遅延をもたらすバイオフィルムは見えるか、そして除去できるか?

看護薬理学教育セミナー1
  • 池谷 裕二
    セッションID: 2018.2_ES-1
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/10/10
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    医療分野の治療戦略は、歴史的にみれば、ほとんど経験則に則ってきました。 かつては、どんな治療法も、どんな薬も「経験的に効果がありそうだから採用し ている」という程度のものでした。科学技術が進歩した現代でも(表面上は学術 的証拠が求められるようにはなっていますが)やはり経験則が主体であることは変 わりません。全身麻酔薬はよい例です。麻酔薬がなぜ効果を発揮するのでしょう か。薬理学的な作用機序は完全には解明されていません。効くことが事実だか ら使っているわけです。理由もわからず使っているとは、よくよく考えてみれば怖 い気がします。しかし、これを「怖い」と感じること自体、私たちがいかに科学的 な説明(に見えるような仮説)に慣れ切ってしまっているかを意味しているのでは ないでしょうか。本来はどんな薬でも「有効かつ安全」ならばよいわけです。この 意味で、私は「科学は経験則を超えることは(将来にわたってさえ)ないだろう」 と考えています。

    私はそんな「科学」に従事する者として、このような講演の機会をいただきま した。講演では、研究者として「科学的な知見」に基づいてお話したいと考え ております。何をお話するかはこの原稿を書いている現時点では決まっていませ ん。しかし、「脳の構造や仕組みを知ること」がいったいどんな変化を、それが 精神的なものであれ、実質的なものであれ、仕事上であれ、日常であれ、ともかく、 どんな変化を私たちにもたらすかを実験してみたいと思います。

    人間は自分のクセに無自覚であるという事実に無自覚です。他人のクセには容 易に気づくことができても、案外と、自分自身のクセに気づかないまま自信満々に 生きているものです。最大の未知は自分自身です。そんな自分の「脳のクセ」に ついて知っておくのは、けっして悪いことではありません。看護の現場でも、つい 脳のクセにはまって、知らず知らずに非効率な言動や、取り返しのつかない失敗 をしてしまうこともあると思います。そんな脳のクセについて、「本当の自分の姿に 気づかないまま一生を終えるなんてもったいない」という前向きな姿勢で、講演に 向けて準備したいと考えています。

看護薬理学教育セミナー2
  • 首藤 剛
    セッションID: 2018.2_ES-2
    発行日: 2018年
    公開日: 2020/10/10
    会議録・要旨集 オープンアクセス

    一般に、人間は物心ついたときから「薬」が身近に存在する(例えば、風邪 薬や胃腸薬など)。それにも関わらず、薬がどのような形・性質を持ち、どのよ うに作用するのかということについては、意外にも知らない人が多い。「そんなこ とは知らなくても生きていける!」と言ってしまえばそれまでだが、自分の体内に入 る薬について知らないことは、何か得体の知らないものを体内に摂取することと 同じであると言っても過言ではない。しかしながら、薬のことを学習する「薬学」 という学問は、薬に関わる様々な現象を「化学」、「生物」、「物理」の知識に基 づいて捉え、それらを融合して「医療」へと応用する学問であり、その全貌を理 解することは、一朝一夕に成し遂げられるものでもない。

    そこで、本講演では、薬学(薬理学)教育・研究者の立場から、一般の方々 が日常生活や診療時に直面する薬に関する様々な疑問を題材にして、難解な薬 学を俯瞰的に捉えるコツやエッセンスについてご紹介したい。具体的には、以下 のような疑問点について取り上げる予定である。

    ①薬の体内の動き、なぜ座薬が必要なのか? ②薬の名前の不思議、一般名と 商品名、なぜこんなに名前があるのか、何が違うのか? ③鎮痛薬・抗炎症薬の 不思議、どこが違うのか?ステロイドは本当に怖いのか? ④抗ヒスタミン薬の不思 議、眠くなるものとならないものの違いは? ⑤抗コリン薬、なぜこんなに副作用が 多いのか? ⑥薬の飲みあわせ、グレープフルーツジュースで薬は飲めない? ⑦薬 と食品、トクホと健康食品の違いは? ⑧代謝性疾患、メタボはなぜ怖い? 最近 の薬のトレンドは?

    以上、本講演を通じて、看護師の方々が、様々な薬がどのような形・性質を持ち、 病気に対してどのように作用するのかという科学的根拠を理解して、質の高い医 療へ貢献できることができるようになることを期待したい。

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