一般に、人間は物心ついたときから「薬」が身近に存在する(例えば、風邪 薬や胃腸薬など)。それにも関わらず、薬がどのような形・性質を持ち、どのよ うに作用するのかということについては、意外にも知らない人が多い。「そんなこ とは知らなくても生きていける!」と言ってしまえばそれまでだが、自分の体内に入 る薬について知らないことは、何か得体の知らないものを体内に摂取することと 同じであると言っても過言ではない。しかしながら、薬のことを学習する「薬学」 という学問は、薬に関わる様々な現象を「化学」、「生物」、「物理」の知識に基 づいて捉え、それらを融合して「医療」へと応用する学問であり、その全貌を理 解することは、一朝一夕に成し遂げられるものでもない。
そこで、本講演では、薬学(薬理学)教育・研究者の立場から、一般の方々 が日常生活や診療時に直面する薬に関する様々な疑問を題材にして、難解な薬 学を俯瞰的に捉えるコツやエッセンスについてご紹介したい。具体的には、以下 のような疑問点について取り上げる予定である。
①薬の体内の動き、なぜ座薬が必要なのか? ②薬の名前の不思議、一般名と 商品名、なぜこんなに名前があるのか、何が違うのか? ③鎮痛薬・抗炎症薬の 不思議、どこが違うのか?ステロイドは本当に怖いのか? ④抗ヒスタミン薬の不思 議、眠くなるものとならないものの違いは? ⑤抗コリン薬、なぜこんなに副作用が 多いのか? ⑥薬の飲みあわせ、グレープフルーツジュースで薬は飲めない? ⑦薬 と食品、トクホと健康食品の違いは? ⑧代謝性疾患、メタボはなぜ怖い? 最近 の薬のトレンドは?
以上、本講演を通じて、看護師の方々が、様々な薬がどのような形・性質を持ち、 病気に対してどのように作用するのかという科学的根拠を理解して、質の高い医 療へ貢献できることができるようになることを期待したい。
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