看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2020熊本
セッションID: 2020.1_S2-1
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シンポジウム2
国際通用性のある看護職の育成
大西 眞由美
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会議録・要旨集 オープンアクセス

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抄録

2015 年に、ミレニアム開発目標(MDGs)から持続可能な開発目標(SDGs)にシフト

し、健康あるいは保健医療課題への対応は 17 の目標のひとつとして位置付けられました。 MDGs の時には、低中所得国志向の開発目標だと捉えられ、日本国内の一般市民社会に おいては馴染みがなかったように思います。一方、SDGsでは、気候変動や平和、また産業・ 技術革新といった点にも注目し、調和と持続性によって最も脆弱な人々への恩恵を保障する 開発目標となったことで、全ての人々が�自分事�として捉えることができるようになり、日本国 内の一般市民社会においても様々な分野でSDGsに基づいた取組が行われるようになりま した。また、現代は、健康の社会的決定要因、人獣共通感染症、地球温暖化や気候変動、 そして災害といったヒトを取り巻く環境から受ける影響を考慮することなしに、ヒトの健康を保 障することはできない状況です。

ところで、「国際的に活躍する看護職」あるいは「グローバルな視野をもった看護職」とし て、どのような姿がイメージされるでしょうか?ここでは、明確な境界がある訳ではありませんが、 看護職が活動する場と対象として以下の 4 つの場合を想定し、考えてみたいと思います。

1. 日本にいる日本人に対する看護活動(例:新興再興感染症、渡航クリニック等)

2. 日本にいる外国人に対する看護活動(例:在日外国人、外国人技能実習生、外国人旅行者等)

3. 海外にいる日本人に対する看護活動(例:海外駐在員、エスコートナース等)

4. 海外にいる外国人に対する看護活動(例:災害等緊急援助、開発協力・国際保健医療協力等) 従来、日本で、あるいは看護教育において語られる�国際保健�は、上記 4に偏ったもの になりがちだったと思いますが、今般の COVID-19については、上記 1 ~ 4 の全てに関わり ますし、看護職は検疫所、保健所、医療施設、介護施設等で様々な役割を果たしています。 では、このような時代に、国際通用性のある看護職に求められる要件とはどのようなもの でしょうか。海外で仕事をしていると、日本の保健医療の素晴らしさと、「そのマジック(ある いはシークレット)は何だ!?」と言われることがあります。一般的に、日本人は和を重んじな がら、コツコツと地道な活動を積み重ね、データをまとめることが得意だと思います。例えば COVID-19 対策においても、保健所保健師は結核・感染症対策の経験を基に、積極的疫 学調査で個別多様な状況を電話で聞き出し、感染源の特定や濃厚接触者の抽出に携わっ ています。日本人が当たり前だと思っていることの中に「マジック」や「シークレット」があると 思います。ただ、残念ながら、日本人にとっては特別なことではないためにそれを世界に発 信しようとしませんし、仮に発信しようとしても国際通用性のある言語を使いこなすことが不 得手であったりします。また、「マジック」や「シークレット」を使えるのは、�日本という条件下で�

といった制限付コンピテンシーになってしまっている、つまり多様なセッティングで適用可能に なるように普遍化・一般化する努力が不足しているといった側面もあるのではないでしょうか。

シンポジウムでは、日本の看護職がもつ「マジック」や「シークレット」とグローバルコンピテ ンシーを対比させながら皆様と議論したいと思います。

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© 2020 本論文著者
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