主催: 日本薬理学会
会議名: 看護薬理学カンファレンス 2021 in 札幌
回次: 2021
開催地: 札幌
開催日: 2021/03/07
私は学生時代からがん看護に興味がありました。特にがん患者さんの治療やケアを見出すことに興味を持っていたことがきっかけで、「ファイト小児がんプロジェクト」という、小児がんの一つである神経芽腫の将来の治療薬を見つけ出すプロジェクトに携わることになりました。そこで、大学院では、ヒトの培養細胞やモデルマウスを用いた基礎研究をしながら、治療薬になりそうな候補化合物を見つける研究を行いました。
それから現在に至るまで、「薬」とは切っても切れない不思議なご縁があり、看護師の私ですが、薬に関する研究に携わっております。今回お話させていただくテーマは、異分野融合研究で切り拓く看護薬理学とさせていただきました。それは、私がこれまで臨床経験の後に看護研究をする中で、医学・薬学・獣医学・農学・工学等の異分野の研究者の先生方とご一緒させていただく機会があり、まったく新しい考えや研究手法によって看護研究の可能性が拡がるのではないかと感じたからです。
現在、大学において、「基礎研究×看護×薬理」という異分野融合研究に無限の可能性と面白さを感じ、看護薬理学を身近な学問として可視化し、臨床現場に還元したいと考えています。今実施している看護研究の一つに「麻酔薬によって血管痛が起きる仕組みの解明」の研究があります。これは手術室で麻酔導入時に痛みを訴える患者さんの苦しみを取り除きたいという思いから立ち上げた研究であり、麻酔薬によって血管痛が起きる仕組みを踏まえた看護ケアの確立を目指しています。血管痛の起きる仕組みの解明が看護研究なの?と思うかもしれません。しかし、血管痛発生の仕組みがわかれば、それを的確に軽減するケアを考えることができるのです。今、大学院生とともに基礎実験の手法を用いてその研究を進めているところです。
また、看護師は様々な疾病管理の観点から、栄養管理や食事療法に関わることも多いと思います。療養生活を送る人々に、食品の効果を最大限に活かすことができるための情報提供は食事指導において重要であり、私は薬膳などに用いられる身近な食品成分の生体への効果を明らかにする研究にも着手しています。
今回は、現在取り組んでいる研究を紹介させていただきます。少しでも「基礎研究×看護×薬理」の異分野融合研究から、看護の発展につながる面白さと素晴らしさを皆さまと共有できたら幸いです。