看護薬理学カンファレンス
Online ISSN : 2435-8460
2021札幌
セッションID: 2021.1_S2-3
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シンポジウム2
周産期におけるDVスクリーニングと支援の実際
長坂 桂子
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会議録・要旨集 オープンアクセス

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抄録

COVID-19感染症パンデミックにより、2020年3月には社会経済状況が一変しました。休業や失業に伴う経済的困難、外出自粛に伴う家庭の密室化と社会とのつながりの断絶等の変化は、進行形で女性、妊婦、子どもの健康に悪影響を及ぼす恐れがある、と背筋の凍る思いがしたのを覚えています。DVや、育児不安、メンタル不調のリスクが上昇すると予想し、崖っぷちの状態に置かれる女性や母子が増えるってわかってるんやったら、先回りして「一人も取り残さない」仕組みを作らないと、と考えました。産婦人科外来でチームとなって行ったコロナ禍の安心ケアの実装です。

 DV被害者支援についてお話します。産婦人科外来のトイレ・産婦人科病棟授乳室には、以前より、DVリソースカー

ドを設置していましたが、「DV相談+(プラス)」(24時間、電話やメールでDV相談が可能;内閣府 2020.4)の情報も併せて掲示しました。

 4月から、妊婦健診方法を変えました。安心妊婦健診です。毎回の妊婦健診は、助産師による診察・ケア(約5分)→医師による診察(約10分)で構成しなおし、濃厚接触の機会を減らし、毎回助産師と面談できるよう変えました。加えて、毎回30秒スクリーニングをすることを新規導入しました。口頭で「うつ(二質問法)、DV(VAWS;女性に対する暴力スクリーニング尺度)、育児不安」の8項目を聞き、妊婦が口火を切りやすい環境を整えました。4月5月の受診者のべ714名中、8項目のうち一つでも当てはまった人はのべ15名(2.1%)、スクリーニング項目には当てはまらないけれど、これを機にお困りごと相談を行った人はのべ47名(6.6%)で、地域連携を行ったケースは4名でした。COVID-19第1波、第2波、第3波では、特徴が異なり、最も相談が多かったのは、第1波の時でした。

 このように、非常事態時に、即時、外来で、30秒スクリーニングを取り入れられたのには理由があります。それは、約15年前より産婦人科病棟で全褥婦にDVスクリーニングを実施していたため、DVケアがルチーンケアとして定着していたこと、そのためスタッフの心理的な抵抗感が少なかったこと、そして、コロナ禍でDV被害者支援をする必要性をチームで共有できたからです。

 本シンポジウムでは上記の臨床実践を含む、褥婦へのDVスクリーニング、コロナ禍で行った妊婦へのDVスクリーニングについてお話します。

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© 2021 本論文著者
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